DVは「共依存」の一現象で、それはアルコール依存の夫婦やひきこもりの母子関係に普通に見られる暴力現象だ。
僕の専門のひきこもり支援では、大人のひきこもり息子が母親を定期的に殴る場合、以下のような対応をアドバイスする。
①警察を呼ぶ(これで暴力は止まる)
②問題は共依存なので、暴力を受けることの無意味さを支援者は母に説く
③それでも暴力が生じる場合、母は家を出て暴力を回避する
④その際、母の居場所(たとえば実家)を息子に伝え、「あなたを愛しているけれども暴力は否定する」と母自身から息子に明確に電話等で伝える
⑤夕食等は作りに母は自宅に戻るほか、電話やメールで定時連絡する
⑥暴力を定期的に振るう息子は、発達障害(凸凹含む)であることが多いので、専門支援者が粘り強く母子を別々に面談支援する
⑦やがて息子は実家を出て一人暮らしし、就労も含め自立する
あまり定式化してもよくないだろうが、たいていはこのバリエーションで解決する。
ポイントは、
②共依存の自覚
④⑤母からの定期連絡と、暴力の否定
だろうか。アルコール依存を伴う暴力もその反復性は強力で、⑥の専門機関が当事者会や入寮になったりとより強制力があるだろうが、構図としては似ている。
また最近では「ハームリダクション(傷つきの漸進的減少)」の考え方も有力になっており、上のひきこもり支援に近づいているのでは、と想像する。
いずれにしろ、共依存関係は「関係そのものを断つ」やり方では、根源的解決はない。
関係を完全断絶しても、別のところで反復するだけだ。
誰が考えたのか知らないが、DV支援の支援措置(妻が完全に連絡を断ち行政がフォローする)は非常に浅はかな方法で、共依存の悲劇を別の関係性の中で反復するだろう。
「子の連れ去り(誘拐)」後の実母による児童虐待や、新しいパートナーとの間での共依存関係の反復がそれを実証している。
閉じた暴力であるドメスティックバイオレンスの構造の中に夫婦間の問題を発見し、それを顕在化させて支援することが、家族の構成員が今よりもベターな状態になっていけることにつながる。
その意味で今回、「連れ去り」が「略取誘拐罪」に再定義されたことにより、夫婦間支援の方法も、支援措置ではない可視化されたものへと再定義されることを願う。