タイトル: 9 月 1 日に、ビルの屋上で下を見る子ども~教育の制度疲労
公開日時: 2019-08-01 17:58:39
概要文: が、まずはこの「教育システムの制度疲労」知ってほしい。9 月 1 日に、ビルの屋上で下を見る子ども、縄を両手で持って見つめる子ども。 なんとかしよう、我々の社会の教育システムの制度疲労を。
本文:
■9月1日に131人が死ぬ
教育基本法が全面改正されたのが 1947 年というから、そこからすでに 72 年がたっている。 だから現在の教育システムはとっくに「制度疲労」になっているはずなのだが、この前子どもに関する統計的な 記事を見ていて、その思いを強くした。
そ れ は 、 子 ど も の 自 殺 数 を 伝 え る BBC ニ ュ ー ス ジ ャ パ ン の 記 事 (https://www.bbc.com/japanese/46106033 日本の児童・生徒の自殺、過去 30 年で最多に)だった。 記事によると、2017 年度の 18 才までの子どもの自殺数は 250 人、ここ 30 年でも最悪の数字だという。
注目すべきは「自殺の日」ではよくいわれる「9 月 1 日」に集中していることだ。
驚くべきことにそれは 131 人、なんと 250 人の半数以上が「2 学期の始まり」として象徴的な日である(というのも 8 月後半から 2 学期 が開始されけることも珍しくなくなったため)9 月 1 日に死ぬ。
自殺は極端な抑うつ状態の結果導かれる現象だ。誰もが超鬱になると、死の誘惑に囚われてしまう。 そんな極端な超鬱が 18 才までの子どもたち(思春期の前期後期等いろいろな説明はできるものの、「子ども」期 であることは確か)を襲う。
20 代 30 代も含めた若い世代の自殺でみても、死因が自殺 1 位なのは先進国のなかでは日本だけになっている (https://resemom.jp/article/2018/06/20/45209.html 若い世代の自殺、死因 1 位は先進国で日本だけ ...H30 年版自殺対策白書)。
これは就労環境の劣悪さも入り込むため「学校」問題のみに絞り切れはしないもの の、日本の子ども若者が死にたいほどの環境に置かれていることは確かなようだ。
■不登校数 14 万人
もうひとつ、「不登校」に関しても、統計的には最悪の数字が上がっている。
それは、不登校数 14 万人というもので、長く続いてきた 13 万人を超えてついに 14 万人台に達したというこ とだ(https://www.sankei.com/life/news/190105/lif1901050034-n1.html 不登校の小中生、過去最多の 14万4千人)。
子どもの数自体は、ついに一学年 100 万人を切り、この 20 年で学年あたり 20 万人以上減少している。 不登校は増え、子どもの数は急減少している。つまり、不登校は年度あたり統計以上に増えている。
ここで僕が指摘しておきたいのは、「不登校の支援そのものはおそらく成功している」ということだ。
それは統計数値には現れにくいかもしれないが、不登校現象に対して丁寧に接していくと(親への定期的面談を 通して子どもへの「説教」をやめさせる、子どもの発達障害等の状態を見抜き親と関係機関で共有する、教師からの過度なプレッシャーを抑えてもらう、子どもとゲーム等で遊びリラックスしてもらう等)、だいたいは翌年 度に再登校できたり「高校デビュー」ができる。
僕はそんな感じでこれまで丁寧に支援してきて、いろいろなかたちではあるものの、多くは再び社会に戻ること ができる。
親が説教をやめるだけで、本当に子どもはリラックスできる。
そのように親の変化を促すのも不登校支援の一つ。また、子どもたちに「居場所」を提供するのも不登校支援の ひとつだろう。
このように丁寧に支援していれば、多様な「社会復帰」のかたちではあるものの、多くはひきこもり状態から脱 出することはできる。
■9 月 1 日に、ビルの屋上で下を見る子ども
が、不登校は相対的に増え続けている。 現場での支援は成功し、不登校=ひきこもりの状態からは脱出できている。
だが、不登校は増え続けている。
7 才から 15 才まで仮に 900 万人いるとすると(各学年 100 万人として実数はもう少し多い)、だいたい 100 人に 1 人強が不登校ということになる。
これが減ることなく維持され続けている。
連続の不登校ではなく「さみだれ登校」などもあるから、実態はもう少し不登校は多いと思う。そうすると、だ いたい「1 クラスに 1 名以上」の教師や支援者が抱く実感に近づくはずだ。
また、9 月 1 日に自殺する子どもたちが 131 人ということは、各都道府県で 2 人以上は 9 月 1 日に死んでいる ということだ。都道府県の人口のバラツキを考慮するとそれほど広く分布しないだろうが、この狭い国土で、131 人の子どもたちが同じ日に自死を選ぶ事態を想像してほしい。
この事態を説明するとすればただひとこと、 教育システムの制度疲労といっても僕は構わないのではないかと思う。
現場の教師はがんばっている。親もそこそこ子どもを応援する。 が、それら現場の努力ではどうしようもない圧力が、子どもたち一人ひとりに襲いかかる。
そのための対策として、学校の中に「居場所カフェ」を (https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20190311-00117803/ この「カフェ機能」こそが、「サードプレイス効果」)、という取り組みを僕や他の NPO は呼びかけている。
が、まずはこの「教育システムの制度疲労」を知ってほしい。9 月 1 日に、ビルの屋上で下を見る子ども、縄を 両手で持って見つめる子ども、線路を凝視する子どもが 131 人いることを。
なんとかしよう、我々の社会の教育システムの制度疲労を。