tanakatosihide’s blog

一般社団法人officeドーナツトーク代表、田中俊英のブログです。8年間Yahoo!ニュース個人で連載したものから「サルベージ」した記事が中心です😀

学習への「絶望」~貧困支援のリアル

タイトル: 学習への「絶望」~貧困支援のリアル

公開日時: 2018-10-28 12:41:31
概要文: NPO が貧困コア層を排除し、コア層は主体的にその圏外から離脱。下流上部層が成功者として止ま

る。このように、下流層内での分断が進行するのが階層社会であり、NPO はその階層社会化の主体となってい る。

本文:

 

■ニッチなジャンル

 

下流層への学習支援」は、そもそもニッチなジャンルだったはずだ。下流層(特に子ども)支援の主な担い手 は児童相談所であり、その中身は大雑把ではあるが「ソーシャルワーク」だ。子どもにとって必要な「社会資源」 をリストアップし、関係者と地道に検討を重ねながら当事者に伝えていく。さまざまな行政や法の「壁」(対象年 齢等)と向き合いながら、ベストは無理としてもできるだけベターな解を探し出し、子どもや親に提供していく。

 

複数の担当者が「バトン」を何年にもわたって受け渡しながら、児童虐待であれば「アフターケア」という法整 備もされていない領域に子どもが到達しようが、なんとか方法を模索する。ひきこもりであれば、当事者が 40 才になりようやく安定しはじめたとしても、そこまで付き合いが続けばもはやそれは「友だち」でもある。

 

学習支援は、そうしたソーシャルワークの一環で発見できた一部の学習意欲のある子ども(数としては少ない) へのニッチなサービスとして始まったと記憶する。

 

そもそも、貧困コア層(生活保護世帯や生活困窮世帯~500 万人以上存在する)の高校生たちの多くが「学習」 に絶望していると僕は捉えている。


この 5~6 年、貧困支援のいろいろな局面で多くの高校生たちと出会ってきたが、主体的に「勉強」に取り組む 高校生たちをほとんど僕は知らない。

 

中退する生徒はもちろん、なんとかがんばって進級できたとしても、学習や勉強をそもそも諦めている。

 

学習能力はあるが勉強の環境が自宅にないために(自室がない、義理の親による面前 DV や心理的虐待〈怒鳴り 声〉が吹き荒れる等)学習から遠い生徒、おそらく児童虐待を起因とする「第 4 の発達障害」からそもそも学習 能力が低い生徒とさまざまな原因はあるが、いずれも共通するのは、学習への「絶望」だ。

 

能力があるないに関わらず、自分と「勉強」は遠い。能力が低い人はコンプレックスや自尊感情の低さと直結す る。能力はあるが環境が劣悪な人は周囲の大人を恨み、結果として学習できていないことにコンプレックスを抱 く。

 

そして、「絶望」とも言っていい諦めがだんだん形成されていく。 そうした諦めをもつ若者に対して無邪気に「学習」を進めることは、ある意味暴力なのだ。その無邪気な言葉か けにより、自尊感情が傷つき、そうした言葉かけをしてくる NPO 若手スタッフたちからひっそりと離れていく。

 

■学習支援が貧困コア層を隠蔽

 

そもそも学習支援もそうなのだが、NPO のサービスは「傍流」に位置してきた。 「下流層への学習支援」は、そもそもニッチなジャンルだった。NPO のサービスはいつもそうで、ホームレスの 人への自転車提供などもそうした「傍流」サービスだろう。が、宣伝上手でイギリス的海外仕込みの理論を持っ た NPO たちは、学習や自転車サービスの重要性を熱く説く。それは悪くはない。

 

残念なのは、特に下流層への学習支援がそうなのだが、ニッチがニッチでなくなりメインのサービスとして「転 倒」したあとだ。学習支援での成功例(下流上部層でそれは可能だ)が過剰に注目され、それにより、上に書い たような貧困コア層の子どもが持つ「学習への絶望」が隠されてしまう。

 

そもそも、自らのニッチ性に自覚的であることが必要なのだが、NPO 側の人々は「学習」によって今の地位を獲 得した(大学での成功体験)方がほとんどなので、そのニッチ性を忘れてしまう。

 

そうした意味では、自分の体験をことさらに強調する代表を持つ NPO は危ない(大学時代に誰と出会ったとかはどうでもいい)。それに反して、貧困コア層の言葉は、多くの場合、中流層出身(あるいは下流層上部出身)成 功者には届かず、その成功体験からは排除され、下流上部層の成功例/学習支援成功者のみ焦点化される。

 

NPO が貧困コア層を無意識的に排除し、コア層は主体的にその圏外から離脱し、下流上部層が成功者として止 まる。


このように、下流層内での分断が進行するのが階層社会であり、NPO はその階層社会化を主体となって推し進 めている。

 

つまり、学習支援が貧困コア層を隠蔽し、階層社会を固定化する装置となっている。

 

■コアな 2 段階

 

何が今の階層社会を固定しているか、多くの若者が潜在層になっているのはどこから始まっているのか。学習支 援(あるいは「語り合い」授業)という名のもとに、下流層上部をターゲティングし成功しつつ(ニッチサービ スとしてそれはあってもいい)、同時に貧困コア層を生み出して遠ざけているは何なのか。

 

今のところの僕の結論は、上に書いたように「NPO の存在そのもの」がそうした隠蔽化を生じさせているとい うものだが、ここでは、貧困コア層の若者支援において、いまの僕が到達した結論を述べておくことに止めよう。

 

それは、当欄でもたびたび触れているような、「高校内居場所カフェで当事者と出会う」ということがコアにあ る(https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20170915-00075804/ 朝の高校に「サードプレイ ス」はある~西成高校「モーニングとなりカフェ」スタート!)。

 

1.高校内居場所カフェという高校内サードプレイス(安全安心・ソーシャルワーク・文化提供の三本柱が理念) でコア層と出会う

 

2. 個 別 ソ ー シ ャ ル ワ ー ク ( た と え ば 「 ひ ら の 青 春 生 活 応 援 事 業 」 https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20171202-00078825/ 高校生「出口戦略」は、個別ソ ーシャルワークだった~「ひらの青春ローカリティ 2」報告)を通して潜在化を防ぐ

 

というものだ。 だからこれは、新自由主義的「ソーシャルインパクト評価」価値には馴染まない。