tanakatosihide’s blog

一般社団法人officeドーナツトーク代表、田中俊英のブログです。8年間Yahoo!ニュース個人で連載したものから「サルベージ」した記事も含まれます😀

いまの NPO のかたち~新自由主義型とローカリティ型

タイトル: いまの NPO のかたち~新自由主義型とローカリティ型 公開日時: 2018-12-05 07:34:05

概要文: 現代のソーシャルセクターは、1.新自由主義型と、2.ローカリティ型の2つに分かれ始めている。 本文:

 

新自由主義NPO の「春」

 

現代のソーシャルセクターは、1.新自由主義型と、2.ローカリティ型の2つに分かれ始めている。

前者はソーシャルインパクト評価に根付く有力 NPO を指す。ソーシャルインパクト評価の欠点については、当 欄でも何回かとりあげている(https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20180911-00096497/ 数が「ソーシャルインパクト」か?~支援なんて、結局は「偶然の他者との出会い」

つまりそれは、目に見える「数」を短期間で要求し、たとえばひきこもりや虐待サバイバー等の 10 年単位で支 援が成功する人々は対象外となる。

短期間で支援が成功する人々を対象とするため、たとえば若者支援の分野では、大多数のひきこもり的人々が対 象外になる。 これは致命的欠点だと僕は思っている。ひきこもり支援や虐待サバイバー支援/アフターケアには、ソーシャル インパクト評価=新自由主義は馴染まない(財政と組織のスリム化がソーシャルインパクト評価の第一の目的で あり、まさにそれが新自由主義)。

来年から本格的に導入される「休眠預金」(700 億円とも言われる)を活用する事業もこのソーシャルインパク ト 評 価 を 根 拠 に す る と い う ( https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20180516-00085298/ 「休眠預金」開始!~わかりやすい問題に「カネ」は集まり、真のマイノリティ問題が捨てられる

新自由主義NPO の「春」がいままさにやってきている。

 

■ローカリティ型の「発見」

 

後者は地域密着型であり、具体例としては「静岡方式」(https://diamond.jp/articles/-/14799 働けない若者 の約 8 割を働く若者に変えた!? 少年院の元教官が教えるウワサの「静岡方式」とは)や、「山科醍醐」 (http://www.kodohiro.com 山科醍醐こどものひろば)の取り組みがある。 「田奈高校」や「西成高校」も含むかもしれない ([https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20170915-00075804/ 朝の高校に「サードプレイ

ス」はある~西成高校「モーニングとなりカフェ」スタート!])。

ここに、3 年前から展開している「ひらの青春生活応援事業」も含んでもいいと僕は思い始めた。 同事業は、高校内居場所カフェの「出口」として、当欄でも以前とりあげた (https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20171202-00078825/ 高校生「出口戦略」は、個別 ソーシャルワークだった~「ひらの青春ローカリティ 2」報告)。

ひらの青春ローカリティの「ローカリティ」は、グローバリティの対抗軸として僕が持ってきたものだが、よく 考えると、グローバリティ/グローバリゼーションとは新自由主義の具体化のことだ。グローバリティは一面で は、ドゥルーズのいう 「群れ」やネグリらのいう「マルチチュード」も含む広範囲な概念のため僕は否定しきれ ないが、それがソーシャルインパクト評価等で顕在化する時、「サバルタン/潜在的当事者」を生み出してしま うという決定的欠点を持つ。

サバルタンを発見したスピヴァク派でも僕はあり、支援者の時はこのスピヴァク派/ポストコロニアル派として 僕はある(https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20151012-00050395/ 「当事者」は語れず、 「経験者」が代表する~不登校から虐待まで~)。 「潜在性」はドゥルーズの重要概念でもあり、僕としては矛盾はないつもりだ。ひきこもりの潜在性、虐待サバ イバーの潜在性等、僕の支援者人生はこの潜在性とともにある。

僕は、新自由主義型を忌避して自分の NPO 人生を歩んできたが、気づいてみると、上にあげた地域密着型/ロ ーカリティ型 NPO たちとともに常に仕事をしているようだ。

自分と親和性のある地域密着型 NPO が、つまりはアンチ・グローバリティでありローカリティ型であると気づ いたのはつい最近でもある。

 

サバルタンは今日も潜在化する

 

このように、どうやらいまの NPO には、上にあげた2つのかたちがあるみたいだ。
前者、新自由主義NPO/NGO はグローバリティ組織らしく、どんどん規模を拡大してる。有力 NPO/NGO では、売り上げ規模が 40 億円だったり 20 億円だったりする。

それと同時に、荒っぽいグローバリティらしく、細かな配慮が足りないようでもある。具体的にはあまり書けな いのだが、行政への報告を手抜きしていたり、貧困支援と言いつつ内実が伴っていなかったり、いくつかの民主 主義的手続きをすっ飛ばしたりしているようだ。

まあグローバリティとはそんなもの。また、売り上げ 40 億円になってしまば、慣れていない社長(代表理事) であれば、細部を手抜きするかもしれない(熟練の中小企業社長たちであれば手抜きはしないだろうが)。

現代の悲劇は、新自由主義NPO におカネが集中するため(寄付金も宣伝上手なこちらに集まりがち)、真の当 事者/サバルタンが今日も潜在化しているという点だ。

このことに、新自由主義NPO リーダーたちは薄々気づいているかもしれない。 だが、億単位に膨れ上がった自分の組織維持が優先になるため、今日もサバルタンは捨象される。新自由主義な リーダーは実はやさしかったりするので、いったん雇用した自分の部下たちを切ることができない(故にサバル タンを生み出し続ける新自由主義事業を続ける)からだ。