tanakatosihide’s blog

一般社団法人officeドーナツトーク代表、田中俊英のブログです。8年間Yahoo!ニュース個人で連載したものから「サルベージ」した記事も含まれます😀

イベンターかソーシャルワーカーか〜NPOの2つのトライブ

 

□イベンターかワーカーか

 

最近僕周辺で話題になるのが、居場所カフェ等の比較的新しい事業をNPOが行なう時、それらNPOの中心スタッフには、

イベンター

か、

ソーシャルワーカー

の2種類がいるなあということだ。

いずれも「支援者」ではある。

2番目のソーシャルワーカーは文字通り支援者だが、1番目のイベンターもNPO業界には支援者として存在する。

この現象は、NPO/社会貢献業界が、前世紀最終盤のNPO法成立の時期に、ボランティア業界から転身した経緯のなかで起こったからだと僕は解釈している。

それまでの曖昧だった「奉仕」の世界が、社会貢献や非営利組織、そしてソーシャルビジネスといった言葉に置き換えられていった。

その中で、一般企業に入り資本主義社会の中で生き残りのしあがる戦略を選べなかった層が、NPO業界に大量侵入した。

 

□ ビジネスか、支援か

 

前世紀まではそれらの層は素朴に福祉あるいはボランティアした。そこではおカネは初めから諦められていた(福祉業界にもまだ「作業所」ノリが強かった)。

けれどもNPO法が成立し、社会貢献とビジネスをある程度両立させて論じても構わない時代がやってきた。

その頃からたくさんの若者がNPO業界に入ったわけだが、入った後、大きな流れとしては、

①ビジネスか、
②支援か、

という2択あるいは両者の優先順位分けができたと思う。

 

□ ITビジネス挫折と福祉業界転職組

 

この①の流れの中には、ITビジネスに挫折してNPO業界に入ってきた人もいる。金融業界からの流入組もいる。あるいは教育産業からの転身組もいる。そしてこの中から現在、売り上げが億単位に上る比較的大きめのNPOにまで育て上げた人々が含まれている。

②の流れの中には、従来であれば福祉業界に就職し現場で支援者になった人々が含まれる。また一般企業に入ったものの退職し従来であれば社協等の公的機関に入っていた人々も含まれる(たぶん、出版社起業→子ども若者支援NPOの僕もここ)。

①は、どちらかと言うと、法人やその法人が仕掛ける「イベント」の隆盛がメインテーマとなる。

②は、目の前で出会う困っている人々を支援することがメインテーマとなる。

そこから、①的な人はイベンターになり、②的な人の一部はソーシャルワーカーになるのだと僕は解釈している。

 

□ 2種類のトライブ

 

つまりこの両者は、元々生きていく世界が異なる2種類の人々なのだ。これは、部族/トライブの違いなのかも、と思えるほど、発想そのものが異なる。

その2種類のトライブがNPO業界に混入されている。

そして、多くの代表理事の発想は基本的にイベンターであり、現場でもがく人々を束ねる事業責任者たちは基本的にソーシャルワーカー(気質)だと僕は思っている。

現場のある意味悲劇は、イベンター代表が勘違いしてソーシャルワーカーに収まってしまうことだが、結果は正直で、その事業は拡大していかない。現場のワーカーたちが共感できないからだ。

逆(ワーカーが大組織を束ねる)は難しいものの、その場合は、イベンターのナンバー2が実質的に束ねるだろう。

これはどちらが正しいかという定義問題ではない。NPO組織が浮つくあるいは揺れる時、そこの中心人物たちのキャラがイベンターかソーシャルワーカーかで分析すると、組織が揺れる原因を分析しやすいということだ。