tanakatosihide’s blog

一般社団法人officeドーナツトーク代表、田中俊英のブログです。8年間Yahoo!ニュース個人で連載したものから「サルベージ」した記事も含まれます😀

マイルドヤンキーとワンピースにはついていけない

タイトル: マイルドヤンキーとワンピースにはついていけない
公開日時: 2016-07-24 10:14:29
概要文: 峰不二子ちゃんやルパン、カジくんとミサトさん、彼女ら彼らの関係性は、単純な「仲間」や「恋人」 などでは決してない。
本文:

 

■マイルドヤンキー的な価値観についていけない


昨 日 ポ ケ モ ン GO ネ タ で 当 欄 を 更 新 し た ば か り な の で あ る が (http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakatoshihide/20160723-00060286/ ポケモン GO!で、ひきこもり はスマホ購入へ GO!)、昨日今日と横浜出張で、新幹線マニアな僕はあえてこだまやひかりに乗って楽しむため 車内でやることもなく、以前から考えていた『ワンピース』とマイルドヤンキーについて綴ってみることにした。


ちなみに今は横浜からの帰りの新幹線こだま内、ガラガラの 1 号車先頭の座席で、先頭座席のみ使用が許される コンセントに MacBook を突っ込んで当記事を書いている(大阪まで 4 時間以上かかるがこれがまた楽しい)。


それはさておき、人気マンガ『ワンピース』とマイルドヤンキーは親和性があると、ホリエモンが指摘している ([http://blogos.com/article/184076/ 記事 キャリコネニュース2016年07月19日 17:47「ワンピース」

の話は飲み屋ではタブー? 面白くないと口にすると「テメェは人間の心が無ぇ!」とファン激怒])。

上の記事内に、以下のようなホリエモンのツィートが引用されている。


「仲間さえ無事なら大丈夫的なマイルドヤンキー的な価値観についていけない」


さすが世の動きに敏感なホリエモン、友情・努力・勝利の権化といってもいい『ワンピース』と、仲間内での信 頼感を最重要価値にするマイルドヤンキーとの共通価値を指摘している。


これに加えて少し前の僕の記事でも触れたのだが (http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakatoshihide/20160720-00060176/ 甲子園があるかぎりマイル ドヤンキーは滅亡しない)、マイルドヤンキーは以下のような「貧困文化」の一部でもある。


EXILE が好き、
地元(家から半径 5km)から出たくない、

「絆」「家族」「仲間」という言葉が好き、

生まれ育った地元指向が非常に強い、

内向的で、上昇指向が低い(非常に保守的)

低学歴で低収入、

できちゃった結婚比率も高く、

子供にキラキラネームをつける傾向、

喫煙率や飲酒率が高い、

(以上はウィキペディアのマイルドヤンキー項より引用・抜粋)


エグザイルやイオンに加えて、重要な文化資本的な要素として『ワンピース』がどうやらあり、マイルドヤンキ ーが先かワンピースが先かはわからないが、それぞれが「仲間・友情」価値を補強し合い、彼ら彼女らの最重要 価値になっている。


■人間は裏切る


ところで、人間は裏切る。

ルパン三世』の峰不二子や『エヴァンゲリオン』のカジくんのようなアニメ世界のキャラだけではなく、実社 会の人間たちは普通に嘘をつき、周囲を騙し、裏切っていく。

裏切りと嘘は、ドストエフスキーの登場人物たちやアメリカ映画『スティング』にだけに出てくる現象ではなく、 世の中でゴロゴロ毎日生産されている。


それは当然ヤクザ社会だけの現象でもなく、普通の会社や普通の学校(クラス)や普通のバイト仲間や古くから の友情関係のになかでも日常的に繰り広げられる光景だ。


当然、僕もよく嘘をつく。また、人々を裏切ることも時々ある。

 

その裏切りは、別の面から見るとライフステージの新段階だったり、あえて裏切り摩擦を起こすことで停滞した 局面を切り開く戦術だったりする。

峰不二子ちゃんもカジくんも、ピョートル・ヴェルホーベンスキー(『悪霊』)もポール・ニューマン(『スティン グ』)も、あえて嘘をつき騙し、一時的に周囲の信頼をあえてなくす行動をとり、仲間たちから見放される。


当然僕も(そしてあなたも)、このような裏切りと嘘によって他者を巻き込み、時には他者から嘘をつかれ裏切 られ、ぐちゃぐちゃの人間関係へと巻き込まれていく。

イギリス映画の名作『秘密と嘘』にも描かれたように、秘密と嘘を前提とするから人間は深く暗く時には明るく 陽気で、それらすべてがからまりあってこその「C'est la vie.(これが人生、ラビー)」なのだ。


峰不二子ちゃんやルパン、カジくんとミサトさん


マイルドヤンキーや『ワンピース』は、いや、友情・努力・勝利の(貧困も含めた)若者文化は、このような「裏 切りの豊穣さ」を悪いもの、倫理的に間違ったものとして否定する。


これは窮屈だ。 なぜなら、現実のマイルドヤンキーたち、あるいは貧困若者たち、いや若者たち全般の日々の人生には、普通に 嘘と裏切りが存在するからだ。


実際に横行する嘘と裏切りを「悪いもの」として否定し、友情と仲間との信頼を絶対善として理想化する。 これは実は、現実の自分たちの生(la vie)を否定する行為でもある。


裏切りや嘘を含む日々の豊穣な生活を肯定せずありえない理想(友情の絶対善化)を善として根拠化するこうし た心理操作は、ニーチェも指摘する「ルサンチマン」の一部である。

まあそんな哲学議論はさておき、以上のような理由でマイルドヤンキーと『ワンピース』は、僕にとってはかな り窮屈なんですね。


峰不二子ちゃんやルパン、カジくんとミサトさん、彼女ら彼らの関係性は、単純な「仲間」や「恋人」などでは 決してない。

裏切られながらも信頼し、時には騙しながらも時々頼る。これが人間関係というものであり、僕が 若者たちに知ってほしい「人間のおもしろさ」だ。


マイルドヤンキーや『ワンピース』は、その人間の深さを伝えることを微妙に邪魔する。★